
豊富なノウハウと細かなサービスで育ちゆく「農業経営者」を支えたい

服部浩二
株式会社服部 代表取締役服部浩二(はっとり こうじ)
1974年三重県出身、金沢工業大学土木工学科卒。桑名市の中堅ゼネコンに入社。その後、家業である服部商店(当時)に転職、肥料製造業に携わる。2016年、代表取締役に就任。「人に誠実に、製品に誠実に」をモットーに、生産者のニーズに応じたオーダーメイド肥料設計を行う。近年は農資材の販売や農業用倉庫の建設、農業コンサルティングなど、トータルソリューションの提供を通じて、地域農業を多角的に支援している。
株式会社服部
〒512-8061 三重県四日市市広永町1343-1
TEL:059-365-2787
農業の将来を支えるのは「農業経営者」

私は大学を出て一度はゼネコンで働き、5年ほどして家業である肥料メーカーに入社しました。それから現場でお客様…つまり弊社の製品を使って作物を育てる、生産者の方々と接する中で、皆さんの一生懸命さを実感しました。弊社のお客様の多くは茶葉農家なのですが、皆さん品質の向上や収量の増加に真面目に取り組んでおられます。
農業というのは、自分で種をまいて自分で育てるという、クリエイティブな面があります。ですが創造のプロセスに集中すればするほど、外部からの情報収集・発信、コスト管理、事業の拡大といった経営的視点に、考えが及びにくくなります。良い作物を育てる農家さんほど、その傾向が強いのです。
だったら、私たちがそこをサポートすればいい。私が弊社の代表に就いた時には、その思いを新たにしました。農業の将来を支えるのは、作物の育成だけでなく、経営的な視点を持ち、情報発信もできる「農業経営者」の活躍です。それでこそ衰える一方の農業を支え、未来に希望を持てるようになるはずです。
作物の品質と収量を両立できる肥料を作る

実際にやってみると、肥料というものの奥深さに驚きます。植物にとっての肥料は、人間にとっての食事と同じです。バランス良く、しっかり食べれば元気になるし、頭の働きも良くなる。植物も同じで、肥料によって成長や味が大きく変わります。売れる作物というのは、収量だけでなく味も重要ですが、それを肥料でコントロールできるのです。もちろんこれは簡単そうに思えて、とても難しいことです。ですが私たちが目指しているのは「服部の肥料を使えば誰でも、良質の作物をたくさん作れる」という領域なのです。
幸い、こうした努力が実を結び、取引先は増え、三重県外まで販売エリアを広げることができました。こうなると、さまざまなお客様の畑から、多くのデータが得られます。この成功事例を他のお客様に当てはめることで、より多くのお客様のサポートができます。
最善の結果を追求する「オーダーメイド肥料」

弊社の一番の強みは、やっぱりオーダーメイド肥料です。これは単に「希望の配合で作りますよ」というだけではなく、お客様の農業経営そのものに深く関わるご提案になります。
オーダーメイド肥料を作る際に最初に考えるのは、お客様側の経営が成り立つかどうかです。どれだけ良い肥料を使っても、肝心の農産物が売れなかったり、美味しくなかったりしたら意味がありません。ですからまず、お客様の経営状況をしっかりヒアリングして、肥料にかけられるコスト感を把握します。
その上で、「どんな作物を、どれほどの品質で作りたいのか」を明確にします。野菜なのか、果樹なのか、お茶なのか。それぞれに求められる成分やバランスは違ってきますから、限られたコストの中で最善の設計ができるように工夫していきます。
実際の配合設計では、土壌の状態を調べるところから始まります。さらに周辺の環境や気候、日照時間なども考慮して、年間を通した施肥計画に合わせて肥料を作っていきます。「こんな肥料が欲しい」というお客様からのご要望にお応えするだけでなく、弊社とお客様との双方向のやりとりから作っていくものなのです。
製造、検証、さらにコスト削減の工夫

弊社では肥料を作って納めるだけでなく、施肥の結果もしっかり検証します。作物の出来は気候にも左右されますし、肥料の成分が思ったように吸収されないこともあります。ですが、うまくいかないケースも含めて、全体像をしっかり見ることが大切です。周囲の農家さんの収量が仮に100だったとしたら、私たちは120を狙っていく。でも、実際にはその「100」という基準自体が毎年変わるので、たとえば近隣に10軒の農家さんがいたら、その中でトップ2に入れるかどうか。そういう相対的な評価をしています。
弊社のお客様の多くは茶葉農家さんですが、大手飲料メーカーとの取引もあります。技術部の方が弊社の肥料を高く評価してくださって、一緒に動くことも多く、情報を共有しながら取り組んでいます。こうしたつながりがあることも、弊社の大きな強みですね。
また従来一般的だった肥料の流通経路を使わず、弊社で生産したものを直接お客様に届けるスタイルを確立したことで、流通コストの大きな削減に成功しました。そのため製造段階で手間をかけ、高品質なものを作っても、より安い価格でお客様に提供することができるのです。
「農業のよろず屋」は信頼の表れ

弊社では肥料を製造するだけでなく、農業に関わるさまざまなご相談に対応しています。たとえば農業用倉庫や作物の小売店舗、工場の建設などもその一つです。
私自身、大学時代は土木工学を学び、卒業後の5年ほどは地元の中堅ゼネコンに勤務していました。建築については知識も経験もありますし、農家さんの実状もよく理解しています。ですから倉庫ひとつ建てるにしても「こういう構造だと使い勝手が良いな」とか「こう作っておくと、将来的にも拡張しやすいな」などと、現実的な提案ができるのです。
建築物だけでなく、農業用機械や設備も手がけていますが、これらの仕事は「管理費だけいただければ、それで良い」というスタンスでやっています。ですから他の業者さんよりも2割から3割ほど安価ででき、お客様に喜んでいただけています。
他にもさまざまなご相談が持ち込まれますが、可能な限りお応えするようにしています。さしずめ「農業のよろず屋」というところですが、これは「服部に頼めば、何とかしてくれる」という、お客様からの信頼の表れですから、誇らしいことだと思っています。
相反する2つの方向を指向する

近年、後継者不足などから廃業する農家さんが増えていますが、そうした農地を買収して規模を拡大する大規模農家さんも増えています。こうしたお客様を対象とした大ロットでの出荷は、弊社の今後の主軸となるでしょう。ですがその一方で、20キロ以下の極小ロット製品についても、販売を摸索しています。
リビングやキッチンで緑を楽しむだけでなく、ベランダのプランターでハーブや野菜を育てる方も増えています。そうした方向けに、おしゃれな雑貨感覚で肥料を使っていただけないだろうか。可愛いプランターと培養土、肥料をセットにすれば、手に取ってくださる方もあるのではないか。もしかしたら「ギフト用肥料」という商品も生まれるかもしれない。そうして「作物を育てる」ということがもっと一般化し、広がっていけば、農業に関心を持つ人たちが増えていくのではないか。そんな夢を、私たちは見ているのです。
日本の農業は「儲からない」というイメージが先行してしまって、そのために「始めよう」と考える人が少ないのだと思います。ですが効率の良いやり方をすれば、農業は十分以上の利益を見込める事業です。そして「儲かる農業経営者」が増えていくことで、日本の農業の将来が開けていくはずです。そのために弊社ではコンサルティングも含めて、多くのノウハウとサービスを「夢」とともに提供していきたいと考えています。
三重の農業が秘める、大きな可能性

これから社会に出ていく若い人たちには「都会がすべてじゃないよ」と伝えたいですね。私自身、若い頃には都会に憧れがありました。ですが豊かな自然があり、生活しやすい環境が整っている三重県は、とても良い場所だと思います。大阪や愛知に比べれば地価は格段に安価ですから、この地域での農業は、まだまだ大きな可能性を秘めていると思います。
またもうひとつ、これからの時代は女性の活躍が重要になってくると思っています。単なる労働力というよりも、女性が持つ柔らかさや繊細さは、効率ばかりを追求してきた仕事の現場において、今後は重要性を増していくと感じています。特に農業においては機械化が進み、昔のような肉体労働は姿を消した反面、より繊細な手作業が求められる場面が増えています。弊社も社員の半数近くを女性が占めています。
都会でなくても、地元で、性別を問わずに力を発揮できる場所はたくさんあります。それが地域や社会にとっても大きな力になると、私は信じています。
株式会社服部
https://www.hattori-s.com/