「やってみたい」が、現場を動かす。三重発、運送業をアップデートする会社
佐藤雄一
株式会社西野 代表取締役社長佐藤雄一(さとう ゆういち)
1969年生まれ。父が経営する運送会社に勤務していたが、同社が株式会社西野と経営統合を行いグループ傘下となる。一時は運送業から離れていたが、西野の先代社長に声をかけられて、入社。2024年、先代の跡を継ぎ代表取締役社長に就任。
株式会社 西野
〒510-8034 三重県四日市市大矢知町1913-4
TEL:059-364-6211
アイデアを口にし、実行してきた若き日の自分
私はもともと、父が経営していた運送会社で働いていました。ところがある時、父の会社が株式会社西野と経営統合することになりまして。その時に先代社長から「規模が大きくなって手が足りないから、手伝ってほしい」と声をかけていただき、入社する運びになりました。
同じ運送業界だといっても、現場の回し方や仕事の流し方は、会社によって違いがあります。担当者として仕事を回していく中で、そうした違いがどうにも気になってくるのです。当時の私は30代半ばと若かったですから、そうした違和感を放っておけません。「ここはこうしたほうが良いのでは」とか「こうすれば、もっと効率がいい」などと、はっきり口にするようになっていきました。
もちろん、大きなビジョンがあって言っていることではありません。それに西野には西野のやり方があり、それで会社を大きくしてきたのですから、当然のように反発も受けます。しかし私は簡単には自分を曲げず、とにかく話し続けて説得にあたりました。こうすれば、もっと良い方向に向かっていく。それを結果が出るまでやり続ける。それしかなかったのです。こうして自分の理想とする形に、少しずつ変えていったのです。
当時の上司や役員の方々は、私よりもずっと年上で、リタイア間近な年齢です。熱弁を振るう私を見て「これからの時代は自分たちよりも、若い者に任せたほうがいい」と、理解してくださったのかもしれません。こうした環境に恵まれたことは幸いだったと思います。そうして一つひとつ信頼を積み重ねた先に、社長就任という大きな役割を任せていただくことになりました。
運送業界には珍しい「直請け8割」という強み
三重県は製造業が強く、大規模なコンビナートもありますから、運送会社も大手から中小零細まで、数多くあります。その中で当社は「一般貨物輸送」「LPガス輸送」「物流センター」を三本柱としています。
これは先代から継承したスタイルですが、結果的にリスクヘッジにもなっていますね。
また当社の請負業務は、8割以上がお客さまからの直接契約です。これは多重下請が常態化している運送業界では、とても大きな強みです。お客さまと自社との間に会社が入れば入るほど、自分たちの声はお客さまには届きません。運賃その他の条件を変えたくても、交渉自体ができないのです。
でも直接契約なら、こちらの考えや現場の状況をお客さまに直接伝えられます。運賃の値上げ交渉にしても、現場の状況を誠実に説明すれば、ほぼほぼ理解していただけます。また、こちらからの提案を検討していただくこともできます。実際、10年以上そうしたスタイルを続けてきて、お客さまからは「現場がどうなっているのか、正直に話してくれるのがありがたい」と、逆に感謝されるようにもなりました。
運送業界は、小さな会社がとても多い世界です。その中で今の規模で会社を回していけるのは、お客様に恵まれ、タイミングに恵まれ、その時々のお客様のニーズに応え続けた結果だと思っています。
自発的に考え、動く人間を育てたい
ここ10年ほどは、会社を自分が理想とする形に導いていくため、かなりワンマンでやってきた部分もありました。でも、これからは違います。従業員みんなが考え、自分たちで動き、次の世代が育っていく会社にしたい。誰かが「やってみたい」と思えて言葉にでき、そんな環境を作りたいんです。
時代の変化は本当に激しいものです。昨日まで正しかったことが今日も正しいとは限りません。半年前に通用していたことが、もう通用しない。だから常に変化を意識しなければいけない。ベテラン社員ほど、日々の業務を感覚的にこなせてしまうんですが、それだけでは駄目なんです。次のこと、新しいことを常に考え続けなければいけない。
ですから人材育成については、とにかく「自分で考えさせること」を大事にしています。自分で経験して、考えて、行動する。失敗しても、最終的に私が責任を取れば済むことです。ですから叱りつけるのではなく、どこに注意すべきか、改善するかを考えながらバックアップする。それを繰り返しています。
そうした育成法が功を奏したのか、最近では少しずつ、従業員のほうから声が出るようになってきました。まだまだですが、変化は感じています。「こんなこと言っても大丈夫かな」ではなく、「とにかく話してみよう、言ってみよう」と思ってもらえるかどうか。そこに尽きると思いますし、そのためにはお互いの信頼感が不可欠だと思っています。
人が育つには時間がかかりますが、コツコツと人材を育て上げ、最終的には私自身が静かに引退できる形を作れたら理想ですね。
頑張った人間が報われる環境が必要
私は当社を「頑張った人が評価され、報われる場所」にしたいと思っているんです。従業員全員が働きやすく、やりがいを感じられ、しかも頑張って成果をだしたらきちんと報われる会社にしたい。その思いでこれまで自社の舵取りをしてきました。
過去の運送会社では、長時間労働は当たり前でした。私自身も、若い頃にはハンドルを握り、月に350時間くらい働いていた時代があります。収入は上がりましたが、働きに対して決して満足できるものではなく、頑張りに見合う手応えを感じにくい時代でした。だからこそ私は、その経験を糧に「働きがいと待遇がきちんと結びつく会社」をつくろうと考えてきたのです。
どんなに頑張っても、その成果が報われないのでは、やりがいも喜びもありません。ですが成果に対して報いれば、そこには喜びが生まれ、感謝が生まれます。感謝があれば「もっと頑張ろう」と思いますし、仕事に対する意気込みも変わります。それが自分を高め、時には周囲にも波及していくのです。
私は常々、「自分は感謝とともにここにいる」と思っています。考えてみれば、私はもともと父の会社が西野に統合され、その縁で西野に入った人間です。統合した側の会社が、合併された会社のオーナーの息子に経営を託すなど、普通はまず考えられないことでしょう。それでも先代社長は、出自や経緯ではなく、私という一人の人間を見て後を任せてくださいました。その決断を下してくれたことへの感謝は、いくら言葉にしても足りません。
また社内には先輩も沢山みえますが、協力的に業務にあたって頂いてます、周囲の方々の支えがあって、今の自分があります。これは決して忘れてはいけない「こころ」だろうと思います。
とにかく経験し、考えて、動くこと
これから社会に出て行く若い人たちには「とにかく自分で経験して考えろ」と言いたいですね。今はスマホ一つであらゆる情報が入ってきます。でもそれは、あなた自身の経験ではありません。人の言葉をそのまま借りているだけでは駄目です。自分で見て、感じて、失敗して、痛い思いをして、その上で考えることが、自分を成長させてくれるのです。
もちろん、思い通りにならないことは多いでしょう。でも思い通りにしたいから、なりたい自分になりたいから、人は努力するのではないですか?うまくいかないことを誰かのせい、環境のせいにしたところで、あなた自身が変わるわけではありません。自分が何を経験し、そこで何を考え、どう動いたか。その結果が自分に返ってくるのです。失敗したと思ったら、何が悪かったのかを考え、また行動すれば良いのです。
よくいわれることですが、人生は一度きりです。歳をとってから「あの時、もっと頑張っていれば」などと後悔したところで、何も変わらないのです。だったら、生きたいように生きればいい。一線を越えては成らない事さえ越えなければ、やり直しはできます、その結果は良くも悪くも、すべてあなた自身に返ってくるのですから。
大きな事はできませんが、四日市市に根差し 老若男女問わず働き甲斐を持って、就労出来る環境を作っていきたい、また私に続く次世代の経営幹部を育てることが、夢ですかね。
