
人を楽しく、わくわくさせる美味しいおやつを提供し続けたい

河村朗子
株式会社おやつカンパニー 常務執行役員河村朗子(かわむら あきこ)
三重県出身。1994年、大阪教育大学教育学部教養学科自然研究専攻生命科学コース卒。卒業後、地元企業である株式会社おやつカンパニーに入社し、自身の希望どおり研究開発部に配属。以来、研究開発職として多くの商品開発に関わる。2019年研究開発部長、2020年執行役員、2024年常務執行役員に就任。
株式会社おやつカンパニー
〒515-2592
三重県津市一志町田尻428-1
TEL:059-293-2233
ひたすら研究に没頭していた学生時代

大学では、教養学部の自然研究専攻生命科学コースを選んでいました。当時はバイオテクノロジー分野が注目を集めていて、ひとつの細胞をうまく培養すると、立派なニンジンを作ることができる…というようなことが盛んにいわれていた頃です。私も生命の謎や成長の不思議に興味を持ち、将来的にはそうした分野に進みたいと思っていました。
ですから卒業後の就職先についても、どこかの企業で、研究職に就く選択肢もありました。ですが、大学時代にひたすら基礎的な研究に没頭してきたせいか、自分の中でやり切った感覚があり、「研究は、もういいかな」という気持ちになっていました。
「好き」を仕事にするために、この会社を選んだ

おやつカンパニーといえば「ベビースターラーメン」ですよね。私も子どもの頃から大好きで、こればかり食べていました。あとはベビースターのカップラーメンかな。本当に大好きで、ほぼ毎日食べていたので親から「ベビースターばかり食べて!」と言われたほどです。親が仕事に出かけてしまえば、家には私1人なので、こっそり食べていました。でもベビースターラーメンって、細かいかけらが床に散らばってしまうんですよ。それで結局親にバレてしまうんですが。
そんなこともあって、就活ではおやつカンパニーを目指しました。せっかく就職するのなら、自分の好きな企業で、楽しめる仕事をやりたい。もともとお菓子は好きだし、食と健康にも興味があったので、それに関連する仕事をしたい。お菓子の商品開発なら、これまでの自分が学んだことも活かせるし、面白そうだ。なんといってもベビースターラーメンの会社なのだから…。
そんなふうに考えて、無事おやつカンパニーに入社したのです。
おやつは「美味しいこと」が絶対条件

入社後は、志望した研究開発部門に配属されました。以来ずっと新商品の開発やリニューアルに関わってきました。ベビースターラーメンはもちろん、えびチップス、フランスパン工房、さらに新しいパフスナックなど。多くの商品を手がけることができました。
おやつといえば、楽しくて、美味しいものでなければいけません。身近で毎日楽しめて、人をわくわくさせてくれる。それがおやつだと思います。ですから新規開発にしろリニューアルにしろ、味へのこだわりは強いですね。美味しいのはもちろんですが、たとえば若い人向けのものならパンチのある味が良いだろうとか、お子さま向けのものなら優しい味付けにするとか。どのような人がどのようなシーンでお召し上がりいただくのかをイメージして作っています。
食感も大切ですね。サクサクなのかポリポリなのか、これは味と同じく重要な要素ですし、どんな素材を使うかも十分な検討が必要です。原料メーカーや機械メーカーの方々とチームを組んで、新作の開発にあたることもありますね。そうした作業が、とにかく楽しいのです。
「食と健康」を考える中から生まれた、新たなシリーズ

私は学生時代の数年間、実家を出て一人暮らしをしていました。その時に食生活の乱れから、体調を崩してしまったのです。それまではさして気にもしていませんでしたが、それ以降は「食と健康」を考えるようになりました。この経験が反映されているのが、「素材市場」です。
素材市場シリーズは、イワシやサバ、エビなどの魚介を生地にしっかり練り込み、素材の美味しさだけでなく栄養素も摂れるようにしたヘルシー感覚のスナックです。カルシウムやEPA、DHA、ビタミンDといった栄養成分を含んでおり、スナックでありながら栄養機能食品(カルシウム、ビタミンD)として販売しています。これは弊社が取り組んでいる「美味しくて、健康にも良いお菓子」というコンセプトから生まれたもので、今後も高栄養価商品や健康素材を使用した商品開発にも取り組んでいきます。
試行錯誤から生まれる「美味しいお菓子」

開発は、考えるところから始まります。「こんなお菓子があったらいいな」とか「こんなお菓子は作れないかな」というところがスタートです。ですがある程度コンセプトができあがってくると、「製品化するにはどうするか」という段階になります。
原料メーカーの方と使える素材についてディスカッションしたり、機械メーカーの方から機械の仕様をヒアリングしたり。開発には成功したけれども製品化には至らず、お蔵入りになった技術を引っ張り出して、新しい技術や素材と組み合わせてみたり。そうした試行錯誤を何度も繰り返します。先ほどお話しした「素材市場」も、そのパターンですね。魚の風味と栄養成分を生地に練り込む技術は、すでに開発されていたのです。ただ、それをどんな形で製品化するかという点で、明確な形が打ち出せずにいました。ですが「健康に良いお菓子」というコンセプトが固まったところで、この技術がマッチすると判断できたわけです。
新しいニーズに新しい技術を組み合わせる…ということは、実際にはあまり多くありません。むしろ先行して開発しストックしておいた既存の技術を新しいコンセプトとマッチングする、ということのほうが多いと思いますね。
アクションを起こさなければ、 結果は生まれない

研究開発というと、静かで地味な印象が強いかもしれません。ですが、私は何かのテーマやアイデアが目の前にあると、もう知りたくなって動かずにはいられない性分なんです。「これをこうしたら、こうなるのでは?」と思ったらやってみること、行動することを意識してきました。今もまず行動することを研究開発の方針としても掲げています。
やはり、頭で考えているばかりでは、何も生まれません。でもアクションを起こせば、成功にしろ失敗にしろ結果が出ます。その結果を出さないことには、その先の一歩を踏み出すこともできないのです。だから動く。そうすれば少なくとも、今よりは一歩先に行けます。そこでまた考え、動き、結果を見てさらに先へと進んでいけばいいと思っています。
もっとも実際の商品開発では、さんざん考えて動いて、うまくいかないことのほうが多いのですが。
2つのポジションから見る、これからの展望

今後の展開としては、ベビースターとブタメン、ふたつの看板商品に続く新たなブランドを生み出し、育てていきたいと思っています。これまで長く研究開発に携わってきた身とすれば、これはぜひとも実現したいことですね。
もうひとつ、執行役員としての立場からいえば、海外での販売をさらに強化するための研究開発を進めていきたいと考えています。
もともと弊社は麺類製造から始まり、1960年代から製品の輸出を行っていました。ベビースターについても1983年の香港への輸出を皮切りに、2017年には台湾工場を竣工。現在では日本・台湾の工場からアメリカ、タイ、シンガポール、など34の国と地域へ輸出しています。これら海外での販売をさらに拡大して「世界の優良スナックメーカー」になることを、中期ビジョンとして掲げています。
海外の大人たちがベビースターラーメンを見つけて「懐かしいな、子どもの頃に食べてたよ」と笑ってくれるような、そんな存在になれたら嬉しいですね。
若者の発想力で、三重県をもっと盛り上げてほしい

これから社会に出る皆さんには、できることなら三重県を拠点に活躍してほしいと思っています。今はネット環境や社会認知も進み、リモートで仕事をすることが珍しくない時代です。大阪や名古屋、東京に「行かなくちゃ」という時代ではありません。どこからでも世界中に発信でき、また情報を得られる環境が整っています。自然豊かで山海の幸にも恵まれた三重にいながら、仕事と生活を充実させることができるのです。若者ならではの発想力で、三重県の未来をぜひ盛り上げていただけたらと思いますね。
株式会社おやつカンパニー
https://www.oyatsu.co.jp/